「見てください、お母様。街が、私達の街が燃えています」「どうしてこんなことに……あぁ、ごめんなさい。あなたが大切にしていた街、グリアが燃やされているのに、私は見ていることしか出来ないなんて……」母と娘と思われる美しい銀髪をした女性が館の窓から、街に火を放ち、領民から略奪を繰り返す様子を見つめる。わずか3日で同盟国から敵国になってしまった旧ゴラス王国の兵士達は、焼き討ちをしながら二人のいる館へと迫りつつあった。「お母様、私、怖いです」「大丈夫よ、ミーシャ。私が側にいるから」そっと娘を抱きしめながら答える銀髪の美しい女性の名は、『アルミナ・グロドヌイ』戦死した夫から緑豊かな地方都市グリアの領主を引き継いだ女性領主。アルミナに怯えながら寄り添う銀髪の少女の名は――『ミーシャ・グロドヌイ』母に負けない美しい容姿を持ったアルミナの一人娘。屋敷を包囲しつつあるゴラス革命軍に、アルミナは絶望の顔を浮かべる。このまま捕まるくらいならば、いっそここで娘と共に命を絶とう。死を覚悟したアルミナの前に、ミーシャの専属メイドを務めていたオリエが現れ、告げた。「地下通路を使って屋敷を離れ、私が用意した馬車で隣国、アルタニに向かいましょう」

ははむす 〜落ちぶれ貴族の母と娘〜 [russ_0340]
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